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当研究室では、主に歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisの分子遺伝学的手法を用いて本菌の宿主=ヒトに対する病原性、または歯周病発症、増悪機序の解明を目指している。また歯周病の全身への影響についても研究を行っています。 |
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2.Porphyromonas gingivalis のゲノム情報に基づく病原性の解析 |
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歯周病細菌Porphyromonas gingivalis ATCC33277株は多くの研究者が基準株として使用しており、この株を親株とした多くの変異株が作製されている。これまではP.
gingivalisのゲノム塩基配列はW83株においてのみ決定されていました。両株間では病原性が異なると報告されていますが、株間における病原性の違いに関係する病原因子はいまだ解明されていません。我々は33277株の全ゲノム塩基配列を決定し、株間における病原性の違いの原因となる病原因子の検索を目指しています。 |
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これまでに33277株ゲノムDNAからライブラリーを作製、これをもとに全ゲノム塩基配列を決定しました(Fig.1)。33277株ゲノムは2,354,886塩基対でW83株ゲノムとほぼ同じでありGC比も差はありませんでした(Table)。 ATCC 33277株とW83株ゲノムを比較すると全領域に渡ってinversionや組替えによる大規模なゲノムの構造の再構成がみつかりました(Fig 2)。これらの再構成がみられた箇所の82%にはconjugative transposon (CTn)を含むmobile genetic elements、またはその痕跡が認められました。このことからP. gingivalisにおけるゲノムの再構成にはmobile elementsが関与していると考えられる。また各株特異的なORFの多くはゲノムの再構成によって影響をうけるORFであったことから、ゲノムの再構成もP. gingivalisの株間の多様性をもたらしていると推測されました。現在、ゲノム情報をもとに網羅的に P. gignivalisの病原性因子を解析しています。 |
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3.歯周病細菌と心血管系疾患との関係についての研究 |
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近年、歯周病と心血管疾患との関係が疫学的に指摘され、この数年の実験的研究はその可能性を支持する結果を与えています。私たちは
P. gingivalisの血小板凝集性や赤血球凝集性に着目し、これらの凝集機構を解明するとともに責任分子を同定しました。現在、詳細な機構解明を行っており、さらには他の歯周病細菌についても解析を進めています。 |
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4.歯周病細菌と骨代謝系についての研究 |
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骨代謝系においては骨芽細胞や破骨細胞の分化機構の分子レベルでの解明が急速に進展しています。歯周病は歯を支持する歯槽骨の吸収を伴う疾患であることから骨代謝機構の破綻を引き起こす疾患と考えられます。破骨細胞はモノサイト/マクロファージ系の細胞で、RANKLやM-CSFというサイトカインによって分化した細胞であり、硬組織吸収能を有しています。この破骨細胞分化に歯周病細菌の感染がどのように影響を与えているかについて研究しています。さらに骨髄炎などの骨感染症の分子レベルでの病態解明について研究を行っていきたいと考えています。 |
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