長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 先進口腔医療開発学分野

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活動報告

モントリオール滞在中の梅林先生から留学記をいただきました!

2019.1.8
カナダ・マギル大学(モントリオール)留学記

梅林 真由美
McGill University, Faculty of Dentistry 頭頚部組織工学・幹細胞研究室
Shriners Hospital for Children 整形外科教室
長崎大学医歯薬総合研究科 顎口腔再生外科

 2017年からカナダのモントリオールにあるマギル大学に留学しています。モントリオールはカナダではトロントに次いで第2位の都市で、フランス語が公用語のケベック州にあります。フランス系カナダ人が多くいますが、移民も積極的に受け入れていて多民族都市となっています。モントリオールでは多くの人がフランス語と英語を話し、お店に入ると店員さんは“Bonjour, Hi”と両方の言語で話しかけてくれます(しかしフランス文化を保護したい政府の思惑から、決して“Hi, Bonjour”とは言いません)。夏は最高気温が30度を超えることが数日しかなく湿度も低いので(ポテトチップスを開けてから1週間放置しても湿気ません)、冷房がない家がほとんどです。冬は−20℃前後になりますがセントラルヒーティングになっている家が多く、日本のように廊下や脱衣所が寒いということはありません。そして防寒具が優秀なので外を歩いていても、九州育ちの私が意外といけるなと思えるくらいなのです。

 私はポスドクとして、マギル大学歯学部の頭頸部組織工学・幹細胞研究室に所属し、さらにそこからご縁があり提携病院であるShriners Hospital for Children という病院にある整形外科教室のラボにも在籍しています。ここで大学院の時から継続している骨再生の研究を行っています。もちろんこちらでは診療業務がないので研究だけに集中でき、細胞に合わせて研究生活ができる環境にあります。簡単に研究内容を紹介すると、骨形成不全症(Osteogenesis Imperfecta: OI)という日本では難病指定されている、遺伝子異常によって正常に骨形成ができない疾患を持つ患者から採取した脂肪細胞由来間質血管細胞群(stromal vascular fraction: SVF)を、骨再生を促進させるツールとして自家移植に利用することを目指すものです。ラボでは2週に1回ラボミーティングがあり、そこでそれぞれの研究の進捗状況を話します。私が初めてのラボミーティングで発表したときは、まだ実験を始める前でしたので論文を抄読しました。大学院の時は同じラボだとほとんどの院生が骨再生の研究だったので細かく説明しなくても共通の理解があったのですが、こちらのラボでは骨再生・唾液腺再生・扁平上皮癌の研究などテーマがばらばらで骨再生についての知識に差があったこと、さらに私の英語力が壊滅的だったせいで、いつもは質問が飛び交うはずの場なのに皆が何を質問したらいいのかわからないという状況を作り出してしまいました。最近自分が発表した後に教授に初めの頃と比べてよくなったと言ってもらえますが、あの発表を覚えられていると思うと、とても恥ずかしく、情けなく思います。

 私は周りが英語しか使わないので海外に住んでいれば英語が上達すると思っていたのですが、一日の大部分の時間を費やしている研究は基本的に一人でするので、英語を耳にしたり、使ったりする機会が想像していた以上に少なく、住んでいるだけでは英語は上達しないと気づきました。たまにラボメンバーと雑談していてもなんで盛り上がっているのかわからず取り残される(その結果疲れている?と心配される)、意見をすっと言えない(頭の中で英文を考えているうちに話題が変わる)、伝えたいニュアンスが伝えられない(自分の英語力で婉曲表現は皆無)など言葉の壁は想像していた以上に高いと感じました。結果として70%ほど理解して適当にうなずくというスキルを身に付けるのですが、何度かでて来る同じ単語がわからなくても今更聞き返せず、スペルもわからないのでもやもやしつつ知ったかぶりをした自分を責める、の繰り返しです。これではいけないと思いこちらで英会話学校に通うと、クラスメイト達は文法を知らなくても語彙力があり授業中に隙があれば発言していて、日本人にはない積極性に完全に圧倒されてしまいます。アメリカの大学に留学するにはTOEFLで大学が要求するレベルをクリアする必要がありますがマギル大学はその要求がないので英語に関するハードルは低いと思います。しかし、渡航前にもう少し準備を重ね、さらに留学してからもっと英語の勉強をするべきだったと反省しています。今は動画サイトや様々なアプリを利用して無料で英語の勉強をすることができます。今後留学される先生方は留学後後悔しないようしっかり準備することをおすすめします。

 モントリオールでは美容院は日曜日が休みで銀行は18時まで(木金は20時まで)でさらに土曜日も営業しています。週末もたいていのお店が17時までは開いています。歯科以外の公立病院は無料で利用でき(待ち時間は長い)、夜間はメトロは止まりますがバスは24時間運行しています。託児所は共働きでなくても利用できます。夏は21時頃まで明るくそこら中でfestivalが開催され、公園ではBBQが盛んになります。日本からは遠いカリブ海の島々にもアクセスがよくヨーロッパまでも5時間ほどです。日本との違いに一喜一憂しながら時間に追われすぎることなくゆったりと過ごせています。これから先、多くの先生方が留学され、日本では味わえない体験をしてほしいと思います。

 この場をおかりして、このような留学の機会を与えてくださいました、朝比奈泉教授、住田吉慶准教授をはじめ大学関係者の方々および医局員の皆様に心から感謝申し上げます。

(2019年1月8日)

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