患者さんへ

特徴ある診療・治療
悪性腫瘍

1)口腔癌とは
口腔癌とは口の中およびその周辺組織にできる癌の総称であり、発生部位により舌癌、歯肉癌、口底癌、頬粘膜癌、口唇癌などがあり、舌癌が最も多いとされています。男女比は3:2 と男性に多く,人口の高齢化に伴って口腔癌の罹患数も増加しつつあります。喫煙や飲酒、食物などによる化学的刺激の曝露、虫歯や不良な歯科補綴物による機械的刺激により誘発されることも特徴です。症状としては、潰瘍(ただれ)の形成や食事中のしみるといった症状、ヒリヒリとした症状など多岐にわたります。なかには、頸のリンパ節への転移により、頸のリンパ節の腫れやしこりを生じるケースもあります。また、癌の遠隔転移が、上部消化管または肺などに認められる場合もあり、早期発見・早期治療が求められます。

2)当科における診査、診断
口腔癌の治療で最も大切であるといえる初期診断ですが、迅速にかつ適切に診断を行うことが重要です。診察とあわせて、細胞診・組織診などの病理学的検査、CT、MR、PET-CT、超音波検査、パノラマ検査、上部消化管内視鏡検査などの画像検査とあわせて診断を行って、可能な限り速やかな治療に望むことで、癌の早期の段階での治療に取り組んでいます。

3)当科における癌治療について
癌の治療には、一般的に大きく分けて、外科手術、放射線治療、化学療法(抗癌剤の治療)の3つの方法があります。これに加えて超選択的動注化学療法などの治療法を提示させていただいております。また形成外科をはじめとし、必要に応じて医科との連携も緊密にし、治療に取り組んでおります。また、治療後も当科の腫瘍外来(毎週月曜日午後および火曜日午後)において、再発・後発転移などが発症していないかどうかの定期検診を診察・画像検査とあわせて注意深く行っており、早期の対応ができるようにしております。
【超選択的動注化学療法】
超選択的動注化学療法とは、癌の支配領域の動脈に細いカテーテルを留置し、抗癌剤を注入する方法です。静脈から投与する方法と比較して、癌を栄養する動脈に直接抗癌剤を投与することにより、抗癌剤が高濃度でかつ確実にがんに行き渡り、高い治療効果が期待できます。また、この治療法の利点として、外科手術後に問題になることの多い機能障害が最小限にできることが挙げられます。顔貌の形態の温存ならびに摂食・構音・嚥下の機能低下を抑えることで患者様のQOL(quality of life: 生活の質)の維持に寄与しています。具体的な方法としては耳の前後にある動脈(浅側頭動脈、後頭動脈)からカテーテルを挿入し、癌組織の部位により栄養を供給する動脈(顎動脈、顔面動脈、舌動脈)までカテーテルを設置する方法と、鼠蹊部の大腿動脈からカテーテル挿入を行うセルジンガー法の2つの方法があります。

4)当科におけるがん治療認定医
・顎口腔再生外科・講師
 池田 久住
 (認定番号;11140024)

・顎口腔再生外科・講師
 大場 誠悟
 (認定番号;12140026)
以下日本がん治療認定医機構ホームページより引用
http://www.jbct.jp/sys_auth_outline_d.htmlNew Window

認定医は,がん治療の共通基盤となる臨床腫瘍学の知識およびその実践を支える基本的技術に習熟し,医療倫理に基づいたがん治療を実践する優れた医師および歯科医師である。
したがって、がん治療認定医(歯科口腔外科)の資格認定に関しては,以下の要件を求めるものとする。
  1. がん治療の全相(初期診断から終末期医療まで)における標準的な医療内容に関して説明責任が果たせる。

  2. 外科治療,薬物療法,放射線療法など各々の専門領域において,その標準的治療に対し、指導医・専門医との連携のもとに適正医療の継続に協力できる歯科医師と認定するに必要不可欠な知識,医療経験を有する。
    ただし,その診療領域については,歯科口腔外科の診療領域(口唇,頬粘膜,上下歯槽,硬口蓋,舌前3分の2,口腔底に,軟口蓋,顎骨[顎関節を含む],唾液腺[耳下腺を除く]を加える部位を対象とする。)に限る。
    また、悪性腫瘍の治療、口腔領域以外の組織を用いた口腔の部分への移植、その他治療上全身的管理を要する患者の治療に当たる歯科医師は適切に医師と連携をとる必要がある。

  3. 外科治療,薬物療法,放射線療法など各々の専門領域において,先端医療(臨床開発研究)の内容が理解できる。

    また、資格審査に合格したがん治療認定医(歯科口腔外科)は,厚生労働省健康政策局・歯科口腔外科に関する検討会の第2回議事内容を遵守するものとする。