ごあいさつ

 

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
分子硬組織生物学(小守班)
骨・軟骨基盤創薬研究室

教授 小守 壽文


分子硬組織生物学、骨・軟骨基盤創薬研究室では、私たちが発見した骨形成のマスター遺伝子Runx2を中心に、骨・軟骨形成とその維持の分子機構を解明してきました。骨を作るのは骨芽細胞で、関節は軟骨細胞でできています。Runx2には2つの大きな機能があります。一つは骨を作ること、もう一つは軟骨を破壊することです。したがって、Runx2を用いて骨形成を促進する骨粗鬆症治療薬ができますが、同時に軟骨を破壊し、変形性関節症を起こしてしまいます。すなわち、骨芽細胞ではRunx2発現を上げ、軟骨細胞ではRunx2発現を抑える必要があります。私たちは、これを実現するために、Runx2遺伝子を詳細に解析し、骨芽細胞と軟骨細胞でRunx2の発現をオンにする領域がそれぞれ存在することを発見しました。骨芽細胞でRunx2の発現をオンにする領域を用いて、実際に骨形成を促進する骨粗鬆症治療薬の候補を開発しました。この候補薬は臨床応用に向けて研究を進めています。また、軟骨細胞でRunx2の発現をオンにする領域を用いて、この領域を抑制する薬の開発を行なっています。これは、変形性関節症の治療薬となります。同様の方法で、関節の維持に必要な分子の産生を促す薬の開発を行なっています。このように、私たちの基礎研究の成果をもとに、独自の方法で骨粗鬆症と変形性関節症の根本的治療薬の開発に取り組んでいます。