PROJECTS
口腔がん、特に骨肉腫や歯肉癌による顎骨破壊、歯周病などにより失われた顎骨や歯槽骨の再生、再建は歯科領域における重要課題であり、骨移植や骨再生療法など様々な臨床的なアプローチがなされています。近年、治療法は進歩し、治療成績は向上していますが、それでもなお、経過が順調ではなかったり、病気は治ったとしたとしても機能障害を残してしまうこともあります。多くの病気に共通することとして、病態が完全には解明されていないために救えない患者さんがいるのが実情です。基礎研究には、この臨床の限界を解決する力があります。当分野の研究は歯科領域にとどまらず、さまざまな領域へ波及し、医学、歯科医学の発展に貢献します。
骨格幹細胞(Skeletal Stem Cells: SSCs)は文字通り骨に存在する幹細胞で、自分自身が増殖できる能力(自己複製能)とともに軟骨、骨、脂肪などさまざまな細胞に分化する能力(多分化能)を併せ持つ細胞だと言われています。近年、我々の研究グループを含む複数のグループによってSSCsが成長ステージに応じて成長板軟骨や骨膜、骨内膜など複数の場所に存在することが明らかになりました。現在さらに機能解析を進めています。
・Nature 563(7730):254-258, 2018
・Nature Communications 13(1):7319, 2022
・Nature Communications 14(1):2383, 2023
骨髄に存在するSSCsは骨再生時において分化の流れの頂点に位置し、絶対的な起源となる細胞として一方向に分化して骨再生を引き起こすと長らく考えられてきました。教科書的にも、骨折などの骨再生過程では、まず始めにSSCsが骨再生部位に集まり、骨再生を引き起こす、と当然のように書いてありますが、実は誰も骨格幹細胞を直接見たことがないのが現状です。我々の研究グループは骨再生時にはSSCsだけでなく、骨に存在する骨髄間質細胞などの本来分化し終わったはずの終末分化細胞が分化の流れに逆らって、幹細胞様の性質を獲得(細胞の可塑性:Plasticity)し、その後、骨芽細胞に改めて分化するという全く新しい骨再生機構を発見しました。
今後の課題としては、SSCsやその他の細胞がどのように協調して、骨を再生に導いているのかを解明していきます。
・Nature Communications 11(1):332, 2020
・Journal of Bone and Mineral Research 36(6):1145-1158, 2021
・Nature Communications 14(1):2383, 2023
SSCsはがんの進展においても重要な役割を果たすと考えられています。しかしながらSSC自体が正確に分かっていない中では全貌の解明には至ることができません。これまでに当分野では骨髄の骨内膜に存在するSSCが、「種」として小児に起こりやすい骨肉腫というがんの発生や進展に関わっていることを明らかにしました。現在メカニズムの解明を進めています。
・Nature Communications 14(1):2383, 2023
現代のサイエンスは自らの専門分野だけにとどまっているだけでは、新たな生命現象の解明には繋がりにくくなっています。当分野では基礎×臨床、医科×歯科、生命科学×情報科学、生物学×化学・工学、メカニズム×創薬・医療材料など、さまざまな観点から分野融合を促進し、イノベーションを創出します。
Public Research Funding:
Fusion Oriented REsearch for disruptive Science and Technology
(FOREST) 2022-2029
Grants-in-Aid for Scientific Research
1. 基盤研究(A) 2025-2028
2. 海外連携研究 2024-2027
Practical Research Project for Rare / Intractable Diseases
病態解明・若手研究 2024-2026
Mobirise.com