1) | ドナーとなる歯牙の抜歯の際、歯根膜の保存が非常に重要です。歯根を挫滅させないように歯根に触れることなく抜歯を行うことが大切です。 |
2) | 歯根が未完成の場合、移植後歯髄の生活も期待できますが、歯根完成歯の場合、移植4週間後に必ず抜髄を行わなければなりません。 |
3) | 移植歯牙の固定はあまり強固に行うとアンキローシスを起こし、あまり予後が よくないと言われています。少し動揺するくらいのセミリジッド固定をしてください。 |
4) | 歯牙の固定はおおよそ6週くらい必要です。 |
歯牙移植術の実際 | |
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本症例は20代女性、右下67欠損 です。右下8番は右上7番との咬合に関与しているため、同歯牙は保存 、両側上顎8番を右下67欠損部への移植を計画しました。まず、左上8番を右下7番相当部への移植を行 いました。歯牙移植部の歯肉は、歯肉パンチにて切除後、12番メスにて歯肉切開を行いました。 |
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トレフィンバー移植部顎骨を形成するために用います。トレフィンバーは、形成が容易であるばかりでなく、形成の際、骨片が採取されます。この骨片は移植歯牙周囲の骨量が不足する場合に移植骨として利用できます。もちろん、ダイヤモンドバーなどでも形成は可能です。 |
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下顎骨へ形成の際は特に舌側皮質骨穿孔にご注意ください。X 線写真はもちろんですが、触診にて十分に下顎骨の形態を把握しておくことが重要です。移植歯牙の歯根よりもやや大きく形成してください。また、CT またはパノラマX 線写真等にて下顎管までの距離を把握し、それを損傷しないように気をつけなければなりません。 |
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移植歯牙の抜歯は非常に重要です。もちろん、分割しなければ抜けないような歯牙は利用できません。抜歯時歯根膜の損傷は避けなければなりません。歯根膜を触らずにすむよう、しっかり歯冠を把持できるダイヤモンド付き鉗子などを用いてください。抜歯した歯牙は直ちに移植を行います。決して歯根を乾燥させてはいけません。その後、シーネ、スーパーボンド等を用いて固定を行います。少し動揺が残るようなセミリジッド固定が理想です。 |
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移植直後のデンタルX 線写真。 術後軟組織が安定する移植 4週間後に抜髄を行わなければなりません。また歯牙の固定は通常6週間行います。 |
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移植後4ヶ月の状態。 移植がうまくいった場合、移植歯牙の周囲に付着歯肉も得られ、また動揺も認めません。 |
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移植後4ヶ月のデンタルX 線写真。 移植歯牙周囲の歯槽骨の再生が認められます。 |
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この症例においては、この時点で、同様の手技にて左側上顎8を右下6相当部に移植を行いました。 |
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左上8を右下6相当部へ移植直後のデンタルX線写真。 |
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右下6相当部に左上8を移植後12ヶ月のデンタルX 線写真およびパノラマX 線写真。移植した歯牙は共に骨植良好で、動揺は認められていません。共に歯根膜の再生が認められます。 |
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最終補綴物が装着された状態です。歯冠歯根比にやや問題が残りますが、咬合が回復されました。 |
歯牙移植術のまとめ |
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